スタンフォードの電子カルテAI「ChatEHR」、利用臨床医1450人に
スタンフォード・ヘルスケアが電子カルテEpicのなかに自ら作ったカルテ用チャットボット「ChatEHR」は、2026年1月中旬の時点で、利用対象のおよそ7000人の臨床医のうち1450人が使っていたと、米医療メディアSTATが2026年1月28日に報じました。このツールは患者の記録全体を読み込み、それについての質問に答えます。開発した研究室によると、自動化した確認によって、感染症サーベイランスのためのカルテ確認などの作業が40%減りました。病院にとっては、IT部門のなかのチームが、何時間ものカルテ読みを、スタッフがすぐ動ける短い症例一覧に変えられることを示す事例です。
臨床医がカルテをより速く読む方法を必要とした理由
受診前に患者の記録を読むのに時間がかかるのは、情報があちこちに散らばっているからです。STATは、ペンシルベニア大学医療システム(Penn Medicine)で最高医療情報責任者を務める循環器内科医のスリナス・アドゥスマリ氏が、診察の前日に、過去の受診、検査結果、画像、ほかの病院からのスキャン文書を、電子カルテのそれぞれ別のタブで一つずつ確認して準備する様子を伝えました。
スタンフォード・ヘルスケアも同じ作業を大規模に抱えていました。同院の研究室はその一例として、150人分のカルテについて、1件あたり5分から20分のカルテ確認が必要なスクリーニング作業を挙げています。
スタンフォードがツールを買わずに作ったもの
スタンフォードはChatEHRを自ら作り、電子カルテEpicにつなげて、2025年9月に医療システム全体へ展開しました。このプロジェクトを記録しているシャー研究室は、これを特定のベンダーに依存しない、院内で統制するプラットフォームだと説明しています。患者の長期にわたる記録全体を、最大二千万トークンまで、リアルタイムでモデルのコンテキストウィンドウに直接入れる仕組みです。
開発したのは、IT部門に組み込まれたデータサイエンスのグループで、ソフトウェアエンジニア、プロダクトマネージャー、データサイエンティストが、大学の研究者と直接やり取りできる体制です。研究室によると、作業は2023年4月のサンドボックスに始まります。2023年11月にChatEHRとなり、2024年半ばまでにいくつもの試作を経て、2025年初めに試験導入に入り、2025年8月までに150人の臨床利用者に達しました。
臨床医の一日のなかでChatEHRはどう動くのか
臨床医は記録のなかでChatEHRのタブを開き、まずデータの種類と期間を選んで、モデルに読み込ませるデータを決めます。続いてチャット画面が開き、利用者は質問をし、答えを高評価か低評価で採点し、またはメニューに戻って新しいセッションを始めます。
このチャットが利用の40%を占めます。残りの60%は、件数が多く繰り返しの多い作業を自動化するAPIを通じて動いています。
「自動化とは、定めた患者の集団に対して決まったプロンプトを当てはめることです」 スタンフォードのシャー研究室、ChatEHRの自動化した確認の進め方について
研究室は、こうして作った運用上の業務の流れを七つ挙げています。患者を適切な医療の場に振り分けることや、感染症サーベイランスの強化から、請求口座の検証まで、さまざまです。
スタンフォードが報告する自動化による時間の節約
研究室は業務の流れごとに数字を示しており、これらは研究室自身の測定です。患者のスクリーニングでは、150人分のカルテの確認が、可能性の高いおよそ30件の症例に絞り込まれます。手術部位感染のサーベイランスでは、カルテ確認が40%減り、研究室によると感染の報告もより早くなります。
コンタクトセンターでは、紹介患者のトリアージにかかる時間が17.7%短くなり、処理件数は17.8%増え、未処理の滞留は五日分から二日分に減りました。入院中のホスピス対象者のスクリーニングでは、600人分のカルテを読んで対象となる10〜40件を見つけ、研究室によると毎日18〜20時間の作業を省いています。整形外科では、紹介患者のトリアージで4700を超える文書を処理し、1日あたり少なくとも1.7時間のスタッフの時間を節約しています。LoAによる請求保留の口座の確認では、1口座あたり10〜15分を節約します。ワン氏らがJAMA Network Openに発表した前向き研究は、外科患者のトリアージでのChatEHRを検証しました。
展開後に利用はどう広がったのか
STATによると、2026年1月中旬の時点で、ChatEHRは利用対象のおよそ7000人のうち1450人の臨床医が使っていました。2025年6月に終わった画面の試験導入では、利用者は150人、チャットのセッションは3000件でした。全院展開から最初の3か月間には、1075人が研修動画を見終え、2万3000件を超えるセッションを行い、処理したトークンは190億を超えました。この期間の利用者には、上級実践医療職(APP)180人、医師424人、研修医151人、専門研修医60人が含まれます。
研究室のその後の集計では、2026年7月の時点で、アクティブ利用者は3400人を超え、セッションは15万件を超え、処理したトークンは1400億に達しています。
病院が自ら作るAIツールがほかの医療機関にとって意味すること
スタンフォードだけではありません。Penn Medicineは2026年1月、チャットボットのような画面で臨床医が患者の記録を検索し要約できる同様のツール「Chart Hero」を導入し、およそ70人の臨床医が試していました。デューク・ヘルスとフィラデルフィア小児病院のチームも、同様のアプリケーションを開発しています。
病院にとって、この事例はこれまでに測定された節約がどこにあるかを示しています。チャット画面だけではなく、紹介患者の待ち行列、感染の報告、ホスピスのスクリーニング、請求の確認です。スタンフォードの方式は、ツールを作って統制できるIT部門内のチームと、ひとつのAIベンダーに縛られないプラットフォームにも支えられています。
よくある質問
スタンフォードのChatEHRとは何ですか
スタンフォード・ヘルスケアの臨床医が、電子カルテEpicのなかで患者の記録全体に質問できる、院内で作られたツールです。定めた患者の集団に決まったプロンプトを当てはめ、カルテ確認を自動化する機能もあります。
ChatEHRを使っている臨床医はどれくらいいますか
STATは、2026年1月中旬の時点で利用対象のおよそ7000人のうち1450人の臨床医が使っていたと報じました。スタンフォードの研究室は、2026年7月の時点でアクティブ利用者が3400人を超えたと報告しています。
ChatEHRはスタッフの時間を節約していますか
研究室によると、特定の業務の流れでは節約しています。紹介患者のトリアージの時間は17.7%減り、手術部位感染のためのカルテ確認は40%減り、整形外科の紹介患者のトリアージでは1日あたり少なくとも1.7時間のスタッフの時間を節約しています。
MOZGIIの視点
私たちならこう作ります
いま病院でAIが最も役立つのは、誰にも時間のない読む作業です。受診前のカルテ確認、スクリーニングの一覧、紹介患者の待ち行列、請求の保留です。スタンフォードの数字はまさにそうした場所に出ています。ChatEHRのようなシステムを作るなら、私たちは紹介患者のトリアージのように、担当者がはっきりしていて終わりの状態も明確な待ち行列をひとつ選んで始め、そのあとでチャット画面を加えるでしょう。時間が戻ってくるのはチャットではなく自動化のほうです。
システムには三つのものが必要になります。一つめは、電子カルテからリアルタイムで取り出した患者の記録全体で、答えごとにデータの種類と期間を記録しておきます。二つめは、入れ替えのきくモデルです。資産は記録であって、モデルではないからです。三つめは、誰かが動く前に短い一覧を承認する、看護師、コーディング担当者、医師の担当者です。崩れるのは、モデルが読めない外部のスキャン文書のように記録が欠けているとき、そして決まったプロンプトがクリニックのいまのやり方からずれていくときです。
注目する指標はひとつ、自動化が印をつけた症例のうち、人が確かめたときに本当に該当するものの割合です。その割合が下がるなら、プロンプトかデータが変わったということです。次に、低評価をすべてプロンプトを担当するチームに届ける仕組みを加え、苦情が来てからではなく、決まった予定で業務の流れごとに見直すようにするでしょう。
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